外国人社員の定着支援において、定期面談は重要です。
しかし、
「最近どうですか?」
「特に問題ありません」
「分かりました」
というやり取りだけで面談を終えてしまうと、本当に必要な情報を把握できないことがあります。
私は外国人として日本で働く一方、これまで外国人エンジニアの派遣、定期面談、契約更新、企業との調整、定着支援などに関わってきました。
その経験の中で感じるのは、
外国人社員との面談では、「何を聞くか」だけではなく、「どのような気持ちで聞くか」も重要だ
ということです。
私自身も外国人として日本で働く中で、
「この質問は答えにくい」
「こう聞かれると話しやすい」
「周囲には小さく見えても、自分にとっては大きな不安だった」
と感じた経験があります。
定期面談は、チェックリストを埋めるための時間ではありません。
本人の状況を知り、前回からの変化を見つけ、必要であれば早めに話せるきっかけを作る時間です。
この記事では、外国人社員との定期面談で確認したい8つの項目と、私が現場で感じてきたポイントについて紹介します。
1.現在の仕事内容
まず確認したいのが、現在担当している仕事内容です。
例えば、
- 現在の仕事内容をどう感じていますか?
- 入社前に聞いていた仕事との違いはありますか?
- 難しすぎる仕事、逆に簡単すぎる仕事はありますか?
- 今後やってみたい業務はありますか?
といった質問があります。
入社前に理解していた仕事内容と実際の仕事に違いがあると、不満につながることがあります。
特に私がこれまで関わってきた外国人エンジニアの中には、
「自分の専門性を活かせていない」
「この仕事を続けてもキャリアにつながらない」
と感じている人もいました。
実際に、会社側は日本語での説明負担などを考えて任せる仕事を限定していた一方で、本人には「自分だけ成長する機会を与えてもらえない」と見えていたケースもありました。詳しくは、「なぜ自分だけ仕事を任せてもらえない?」外国人社員への配慮が不公平に見えた理由で紹介しています。
面談を「確認作業」にしない
ここで重要なのは、質問内容だけではありません。
面談時に担当者がパソコンの画面だけを見ながら、
「仕事はどうですか」
「問題ないですか」
と順番に質問するだけでは、本人も話しにくくなることがあります。
私は、できるだけ堅い雰囲気を作らず、
「あなたの状況を本当に知りたい」
という姿勢で話すことが大切だと感じています。
面談担当者が形式的に質問しているのか、本当に状況を知ろうとしているのかは、本人にも伝わることがあります。
面談の質は、質問項目だけではなく、こうした関係性によっても変わります。
2.業務量と仕事の難易度
次に確認したいのが、仕事量と難易度です。
例えば、
- 今の仕事量は多すぎませんか?
- 残業時間についてどう感じていますか?
- 難しく感じる業務はありますか?
- 現在の働き方に満足していますか?
といった質問です。
ただし、
「残業が多い=本人にとって悪いこと」
とは限りません。
ワークライフバランスを重視する人もいれば、
「日本で働いている間にできるだけ収入を増やしたい」
と考え、一定程度の残業を希望する人もいます。
そのため面談では、現在の業務量だけを見るのではなく、
本人が仕事に何を求めているのか
を知ることが重要です。
例えば、
- ワークライフバランスを重視したい
- できるだけ収入を増やしたい
- スキルアップを最優先したい
- 安定した環境で長く働きたい
など、人によって優先順位は異なります。
同じ仕事量でも、本人の目的によって受け止め方は変わります。
だからこそ、
「仕事量は適切ですか?」
と聞くだけではなく、
その人自身の仕事観や働き方の希望を理解した上で確認すること
が大切です。
3.上司とのコミュニケーション
長期定着を考える上で、上司との関係は大きなポイントです。
これは外国人社員に限った話ではありません。
どのような上司と働くかによって、その会社で長く働きたいと思えるかどうかが変わることがあります。
面談では、
- 上司からの指示は分かりやすいですか?
- 分からないことを質問しやすいですか?
- 上司に相談しにくいことはありませんか?
- 現在の上司のマネジメントスタイルをどう感じていますか?
といったことを確認します。
さらに可能であれば、私は採用段階から、
本人がどのような上司を好むのか
を確認することも大切だと考えています。
例えば、
「厳しくても成長させてくれる上司がいい」
という人もいれば、
「多少ゆっくりでも、話しやすく穏やかな上司がいい」
という人もいます。
どちらが正しいという話ではありません。
重要なのは、
本人が求める上司像と、実際に一緒に働く上司のスタイルに大きなギャップがないか
ということです。
採用段階でここまで確認できれば、入社後のミスマッチを減らすことにもつながります。
4.チーム内の人間関係
仕事内容に大きな問題がなくても、人間関係が退職を考える一つの要因になることがあります。
面談では、
- チーム内で話しやすい人はいますか?
- 職場で孤立していると感じることはありませんか?
- 日本語でのコミュニケーションで困ることはありますか?
- 困った時に相談できる人はいますか?
などを確認します。
私がこれまで関わってきた中には、仕事上のコミュニケーションはできても、日本語での雑談や昼休みの会話には入りにくそうにしている人もいました。
特に日本に家族や長年の友人がいない人の場合、職場での人間関係が日本での生活全体の安心感にも影響することがあります。
そのため、企業側が仕事以外の場で自然に交流できるきっかけを作ることも、一つの支援だと思います。
実際に私が勤務している会社でも、こうした課題を踏まえて、希望者が参加できる社内のフットサル活動を始めました。
頻繁に開催するものではありませんが、2~3か月に一度ほど、フットサルに興味のある外国人社員と日本人社員が一緒に参加しています。
フットサルが終わった後には自然な流れで食事をする機会もあり、業務中とは違う形で話せる場になりました。
こうした場では、普段の仕事だけでは見えなかった一面が見えることがあります。
実際に日本人社員からも、
「仕事中には分からなかったけれど、こんな一面がある人だったんだ」
「今までより話しかけやすくなった」
といった声がありました。
外国人社員側にとっても、
「この会社には自分と自然に話せる人がいる」
「仕事以外でも関係を作れる」
と感じられることは、安心感につながる場合があります。
もちろん、すべての人がフットサルや社内イベントを好むわけではありません。
そのため、参加を強制するのではなく、スポーツ、食事、趣味の集まりなど、自然に参加できる選択肢を用意することが大切です。
私は、こうした一つひとつの小さな取り組みによって、
外国人社員と日本人社員との心理的な距離が少しずつ縮まり、職場での安心感につながることはある
と感じています。
実際に、給与が特別高くなくても、先輩社員のサポートや質問しやすい雰囲気、周囲との関係、納得できる評価などが重なり、外国人材が平均約7年働いている職場もありました。
詳しくは、
「給料は高くない。でも辞めない」外国人材が平均7年働く職場で見えた定着の理由」
で紹介しています。
会社が大きな制度を一度に作らなくても、
「自然に話せるきっかけを作る」
「仕事以外でも相手を知る機会を作る」
といった小さな支援から始めることはできます。
5.評価とフィードバック
評価についての理解も重要です。
例えば、
- 自分がどのように評価されているか分かりますか?
- 何を改善すれば評価が上がるか理解していますか?
- 上司から十分なフィードバックをもらえていますか?
- 評価制度で分かりにくい部分はありますか?
といった質問があります。
日本企業でも会社によって評価基準は異なりますが、
- 報告・連絡・相談
- チームとの連携
- 周囲への配慮
- 業務プロセス
などを見る会社もあります。
そのため、評価結果だけを伝えるのではなく、
なぜその評価になったのか
まで説明することが大切です。
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「報連相が足りない」と感じる背景には、本人と会社で「何を報告すべきか」の基準が違うケースもあります。実際の事例から、報告範囲の認識のズレについて考えました。
6.今後のキャリア
外国人社員との面談では、キャリアについても定期的に確認する必要があります。
例えば、
- 今後どのような仕事をしたいですか?
- 身につけたいスキルはありますか?
- 1年後、3年後にどのような仕事をしていたいですか?
- 現在の仕事は自分のキャリアにつながっていると感じますか?
といった質問です。
キャリアに対する価値観は人によって大きく違う
キャリアに対する考え方は、国籍だけではなく、業界、世代、これまでの経験、本人の価値観によって大きく異なります。
一つの会社で長く働きたい人もいれば、
数年ごとに経験を広げながらキャリアアップしたいと考える人もいます。
そのため、
「〇〇国出身だからこういう考え方だ」
と決めつけるべきではありません。
文化や雇用慣行は背景情報の一つとして理解しつつ、
最終的には本人のキャリア観を直接確認すること
が大切です。
キャリアへの期待は、本人と会社で「時間の感覚」がずれていることもあります。
正社員転換をめぐり、本人の「もう5か月」と会社の「まだ5か月」がすれ違った実例はこちらで紹介しています。
企業側の希望だけを伝えるのではなく、
「あなたは今後どのようなキャリアを作りたいですか?」
と聞き、双方の考え方を確認しておくことが大切です。
7.日本での生活
外国人社員の長期定着を考える場合、
仕事以外の生活面を完全に切り離して考えるのが難しいケースもある
と私は感じています。
会社によっては、仕事とプライベートを明確に分けて考えることもあります。
もちろん、社員の私生活に会社が過度に介入するべきではありません。
ただ、外国人社員の中には、日本での生活基盤がまだ十分に整っておらず、
- 病院
- 行政手続き
- 住居
- 日本語
- 友人関係
- 家族
- 地域での生活
などで困る人もいます。
実際に私が外国人社員を支援してきた中でも、
仕事には大きな不満がなくても、
「日本で友人を作れない」
「病院に行っても医師とうまくコミュニケーションできない」
「生活上の手続きが分からない」
といった理由から、日本で生活を続けることそのものを迷う人がいました。
会社がすべてを解決する必要はありません。
本人が自分で調べ、対応しなければならないこともあります。
ただ、
生活上の問題が出た時に、どこまで会社が対応し、どこから外部の支援先につなぐのか
について、ある程度考えておくことには意味があります。
「勤務時間外だから会社とは関係ない」
と完全に切り離すのではなく、必要な時に相談先を案内できる状態を作っておくことも、一つの支援だと思います。
実際に、住居契約で必要になった「緊急連絡先」をめぐる出来事が、本人の会社に対する信頼に影響したケースもありました。
詳しくは、【退職者の本音 #02】「緊急連絡先になれない」3年働いた外国人社員が会社に不信感を持った理由で紹介しています。
8.契約・在留資格・今後の働き方
特に契約社員や派遣社員の場合、
契約の継続性に対する不安
が大きなストレスになることがあります。
面談では、
- 契約更新について不安はありますか?
- 今後も現在の職場で働きたいですか?
- 在留資格について不安なことはありませんか?
- 勤務地や働き方について希望はありますか?
などを確認します。
私が現場で感じるのは、
悪い結果をはっきり伝えられること以上に、いつまでも曖昧な状態が続くことに強い不安を感じる人がいる
ということです。
外国人社員の中には、母国の家族へ継続的に送金していたり、自分の収入が家族の生活に大きく影響していたりする人もいます。
その場合、
「来月も仕事を続けられるのか分からない」
という状態は、本人だけの問題ではありません。
家族全体の生活に関わることもあります。
そのため、契約更新について判断できる時期や、今後の見通しについては、可能な範囲で早めに共有することが大切です。
不確実な状態が長く続けば、
「より安定した職場を先に探しておこう」
と本人が考えることもあります。
日本語力が十分でない場合は「面談後の確認」が特に重要
外国人社員との面談で、もう一つ注意したいのが日本語です。
面談担当者が質問をし、
外国人社員が何か回答した。
それだけを見ると、コミュニケーションが成立しているように見えます。
しかし実際には、
質問の意味を十分に理解できておらず、本人が別の意味で回答している
ことがあります。
その結果、
面談担当者は、
「特に問題はなさそうだ」
と判断しているのに、
本人は、
「自分が話したかったことを伝えられなかった」
という状態になることがあります。
私はこのような違いを減らすために、
面談後に内容を簡単に文章としてまとめ、本人にも共有すること
が有効だと考えています。
現在はAIや翻訳ツールも発達しています。
面談内容が文章として残っていれば、本人は後から自分の母国語に翻訳して、
「会社はこのように理解しているのか」
「自分が伝えたかった意味と合っているか」
を改めて確認できます。
そして、
「この部分は私が言いたかった意味と違います」
ということがあれば修正できます。
面談をしたことではなく、双方が同じ内容を理解できたことが重要です。
私自身も、日本企業で働いていた時に、十分に理解できていないにもかかわらず、その場の雰囲気や周囲の目を気にして「分かりました」と答えてしまった経験があります。
定期面談では同じ質問を継続する
面談のたびに質問内容を完全に変えてしまうと、本人の変化を把握しにくくなります。
例えば、
前回
「上司との関係は問題ありません」
今回
「最近少し相談しにくいです」
次回
「最近はほとんど上司と話していません」
という変化があれば、状況が少しずつ変わっていることが分かります。
そのため、
- 仕事内容
- 業務量・働き方
- 上司との関係
- チームとの関係
- 評価
- キャリア
- 日本での生活
- 契約・今後
という基本項目をある程度フォーマット化し、継続して確認する方法がおすすめです。
面談記録を残し、前回との変化を見る
面談後は、
- 面談日
- 本人の発言
- 前回から変化した点
- 企業側で対応する事項
- 本人側で行う事項
- 次回確認する事項
を簡単に記録します。
定期面談で大切なのは、1回の回答だけを見ることではありません。
時間の経過とともに本人の考えや状況がどう変化しているかを見ること
です。
3か月でフォローを終わらせない
入社後、
1週間
↓
1か月
↓
3か月
までフォローする会社はあると思います。
ただ、私がこれまで関わってきた中では、仕事に慣れてから初めて見えてくる問題もありました。
例えば、
- 評価への不満
- キャリアへの不安
- 人間関係
- 日本での生活への疲れ
- 契約更新への不安
などです。
そのため、
入社1週間後
↓
1か月後
↓
3か月後
↓
6か月後
↓
その後3~6か月ごと
といった形で、継続的に話せる仕組みを作ることも一つの方法です。
面談頻度は会社や本人の状況によって変えてよいと思います。
重要なのは、
「3か月たったから、もう問題ない」と決めつけないこと
です。
まとめ|定期面談は「質問する時間」ではなく、「お互いの理解を確認する時間」
外国人社員との面談では、質問項目を用意しておくことは重要です。
しかし、8つの質問をすべて聞けばよいという話ではありません。
同じ
「問題ありません」
という言葉でも、
本当に問題を感じていない場合もあれば、
まだ本人の中で整理できていない場合もあります。
言いにくくて、その場では話さない場合もあります。
だからこそ大切なのは、
答えそのものだけではなく、
前回から何が変わったのか。
本人が話しにくそうにしていることはないか。
こちらが理解した内容と、本人が伝えたかった内容は同じか。
そこまで見ていくことだと思います。
私自身も、日本企業で働く中で、
「分かりました」
と答えながら、実際には十分に理解できていなかった経験があります。
当時は、質問される側として、
「分かりません」
と言いにくい場面がありました。
一方で現在は、外国人社員と面談する側でもあります。
両方を経験した今は、定期面談を、
「質問する時間」ではなく、「お互いの理解を確認する時間」
と考えるようになりました。
何か大きな問題が起きてから初めて話すのではなく、
普段から話せる状態を作り、
小さな変化があれば、その時にもう少し聞いてみる。
それだけでも、後になって
「そんなことを考えていたとは知らなかった」
となるケースを減らせることはあると思います。
皆さんの会社では、
定期面談の最後に本人から
「特に問題ありません」
と言われた時、
その一言だけで面談を終えていないでしょうか。



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