最近、日本の外国人政策について考える機会が増えました。
2026年10月1日から、在留資格の変更や在留期間の更新、永住許可にかかる手数料が大きく変わります。
永住許可の手数料は20万円となり、在留資格の変更や更新についても、許可される在留期間に応じて手数料が設定される仕組みになります。

出入国在留管理庁は、審査にかかる実費や在留管理に必要な費用、諸外国の同種手数料、今後の物価上昇などを総合的に考慮したと説明しています。
また、永住許可についても、2026年2月にガイドラインが改訂され、2027年4月1日からは「最長の在留期間をもって在留していること」という要件の取扱いが変わる予定です。
こうした動きを見ながら、私は最近、一つのことを考えるようになりました。
外国人材に「来てほしい」日本と、在留管理をより厳しくしていく日本は、これからどう両立していくのだろうか。
もし私が外国人ではなかったら、もっと素直に賛成していたと思う
最初に書いておきたいのは、
私は外国人政策を厳しくすること自体に反対しているわけではありません。
法律を守らない人や、必要な納税・社会保険などの義務を果たさない人に対して、適切に対応することは必要だと思っています。
日本で暮らす以上、日本の法律や制度を守ることは当然です。
正直に言えば、
もし私自身が外国人として日本で暮らしていなかったら、最近の外国人政策の厳格化には、もっと素直に賛成していたと思います。
外国人をめぐるさまざまな問題がニュースになる中で、
「もっと厳しく管理した方がいい」
「ルールを守らない人には厳しくするべきだ」
と考えた可能性は高いと思います。
日本の外国人政策をめぐる動きは、近隣国でも報道されています。
そうしたニュースを見て、
「自国でも外国人政策をもっと厳しくするべきだ」
という意見を目にすることもあります。
外国人を受け入れる側からだけ見れば、その考え方も理解できます。
ただ、実際に外国人として日本で生活してみると、同じ政策が少し違って見えるようになりました。
私が気になるのは、値上げそのものではない
私自身は現在の在留状況を考えると、今回の手数料改定によってすぐに大きな影響を受ける立場ではありません。
だから、
「自分の負担が増えるから反対したい」
という話ではありません。
長い間、大きく見直されてこなかった手数料であれば、物価や行政コストの変化に合わせて一定の値上げをすること自体は、私は理解できます。
永住許可の手数料が20万円になることについても、金額そのものが極端に高すぎるとは考えていません。
永住者になると、在留活動と在留期間の制限がなくなり、他の在留資格と比べて在留管理が大幅に緩和されます。
日本で長く生活する予定の人にとっては、その安心感を得るための費用として20万円を支払うことには、十分な価値があると私は思っています。
私が今回気になったのは、
金額そのものよりも、その変化の大きさと速さです。
長い間ほとんど変わらなかったものが、一度に大きく変わる。
制度を作る側から見れば、必要な費用を適正な水準に見直しただけなのかもしれません。
ただ、日本で暮らす外国人の一人として見ると、
単なる「手数料改定」以上のメッセージに感じる部分がありました。
「日本は、これからも外国人に長く住んでほしいと思っているのだろうか」
そう感じる人がいても不思議ではないと思います。
もちろん、
日本政府が「外国人に出て行ってほしい」という意図で制度を変更している、と言いたいわけではありません。
実際、出入国在留管理庁は、手数料引き上げによる増収分について、在留管理の適正化だけでなく、情報発信や相談体制の強化、日本社会への適応支援などにも活用する方針を示しています。
ただ、
制度を作る側の意図と、それを受け取る側が感じるメッセージは、必ずしも同じではありません。
数年かけて上げる方法もあったのではないか
私は、最終的に現在示されている水準まで手数料を引き上げること自体には反対ではありません。
ただ、
例えば数年かけて段階的に引き上げ、
「何年後にはこの金額になります」
と事前に示す方法もあったのではないかと思っています。
そうすれば、外国人側も制度変更を前提に生活設計をすることができます。
特に在留期間の更新は、本人一人だけの問題ではありません。
配偶者や子どもと日本で生活している場合、家族全員が同じ時期に更新を迎えることもあります。
4人、5人の家族であれば、一人ではそれほど大きく見えない金額でも、家族全員分になると負担はかなり変わります。
なお、2026年10月以降は、一定の経済的困難など特別な事情がある場合に、変更・更新手数料を1万円まで、対象となる永住許可については2万円まで減額できる制度も設けられています。対象には条件があります。
それでも、
急に変わるよりも、
数年先まで見える形で段階的に変わる方が、受け取る側の安心感は違ったのではないかと思います。
真面目に暮らしてきた外国人にも、同じメッセージが届く
外国人の中にも、いろいろな人がいます。
法律や在留ルールを守らない人もいるでしょう。
一方で、
何年も日本で働き、
税金を払い、
社会保険に加入し、
法律を守りながら生活してきた外国人もいます。
私自身、そうした外国人の立場から最近の動きを見ていると、
「外国人全体に対して、一度に厳しくなっている」
ように感じる部分があります。
では、
長期間きちんと納税してきた人には別の扱いをすればいいのか。
何年間問題なく生活すれば「安心を与える側」に分けるのか。
そこには新しい線引きが必要になり、今度は別の不公平感が生まれる可能性もあります。
だから私は、簡単に「こう制度を変えればいい」とは言えません。
ただ、
ルールを守らない人に厳しくすることと、ルールを守って暮らしてきた人に安心を示すことは、同時に考えてもいいのではないか
と思っています。
例えば、
「ルールを守らない人には厳しく対応します」
と伝える。
その一方で、
「日本で働き、納税し、社会のルールを守って暮らしている外国人には、これからも安心して生活できる環境を作ります」
というメッセージも同時に出す。
私は、この二つは矛盾しないと思っています。
お金より、「5年後もここにいられるのか」が気になる
少なくとも私自身や、最近話した外国人たちを見ていると、
数万円の手数料そのものよりも、
「5年後、10年後も日本で安心して暮らせるのだろうか」
という不安の方が大きいように感じます。
もし収入だけを最優先するのであれば、日本以外にも選択肢はあります。
それでも日本を選ぶ理由として、
日本独自の文化、
治安、
生活環境、
家族で生活しやすいことなどがあります。
あわせて読みたい
給与だけではなく、職場の人間関係や安心感、評価、生活環境などが重なり、外国人材が長く働いている職場もあります。
私自身は、特に子どもを育てる環境としての安全性は、日本の大きな強みの一つだと感じています。
一方で、
どれだけ生活環境が良くても、
「この国で長く暮らせるのか分からない」
という不安が強くなれば、日本を選ぶ理由が弱くなる人もいると思います。
これから人手不足が進む国同士で外国人材を獲得する競争が強くなれば、
日本にとっても無関係な問題ではないと思います。
永住資格を持っている人からも、移住を考えるという話を聞いた
私は仕事柄、
日本に来たばかりの外国人から、長く日本で生活している外国人まで、さまざまな人と話す機会があります。
最近は、日本の外国人政策について本人たちがどう感じているのかを聞くこともあります。
私が最近話した人たちの中では、この政策の方向性を気にしている人がかなり多くいました。
中には、
日本で10年近く生活し、すでに永住資格を取得している人から、
最近の政策の流れを見て、他の国への移住も考えているという話を聞いたこともあります。
もちろん、
これは一人の事例です。
日本で暮らす外国人全体が同じように考えているわけではありません。
また、その人が実際に日本を離れるかどうかも分かりません。
ただ、
すでに永住資格を持ち、日本で長く生活してきた人まで、
「これから日本がどう変わるのだろう」
と考え始めている。
そのことは、私には少し印象的でした。
外国人政策は、企業にとっても他人事ではない
外国人政策は、
政府と外国人本人だけの問題に見えるかもしれません。
しかし、
外国人材を雇用する企業にとっても、無関係ではないと思います。
本人が、
「これからも日本で暮らしたい」
と思っているのか。
それとも、
「数年後には別の国も考えた方がいいかもしれない」
と思っているのか。
その違いは、
キャリア、
住宅、
家族、
子どもの教育、
そして今の会社で長く働くかどうかにもつながります。
会社がどれだけ、
「長く働いてほしい」
と思っていても、
本人が、
「日本で長く暮らせるか分からない」
と感じていれば、
企業だけでは解決できない部分もあります。
ただ、制度そのものを企業が変えることはできなくても、
本人が何を不安に感じているのかを聞くことはできます。
例えば定期面談の中で、
「これからも日本で生活を続けたいと思っていますか」
「最近の在留制度の変化で、不安に感じていることはありますか」
と聞いてみる。
外国人社員との面談で確認しておきたい項目については、「外国人社員との定期面談で確認すべき8つの項目|離職を防ぐ質問例と現場で感じたポイント」でまとめています。
仕事や給与だけを聞いていると見えなかった不安が、そこで初めて出てくるかもしれません。
外国人政策について企業が答えを出すことはできません。
それでも、
本人がどんな将来を考えているのかを知ることは、
外国人材の定着を考える上でも意味があると思っています。
厳しくすることと、安心を示すことは両立できると思う
私は、外国人政策の厳格化そのものに反対ではありません。
ルールを守らない人には、必要な対応をするべきだと思います。
長期間大きく変わってこなかった手数料の見直しについても、その必要性は理解できます。
それでも、
日本で暮らす外国人として今回の動きを見た時に感じたのは、
厳しくなったことそのものより、「これからも自分たちは日本にいていいのだろうか」と感じさせてしまうことへの不安
でした。
厳しくすることと、
排除するように感じさせることは同じではありません。
そして、
ルールを守らない人に厳しくすることと、ルールを守りながら日本で生活している人に安心を示すことも、両立できるのではないか。
私はそう考えています。
外国人材を必要とする日本が、
これから在留管理をより厳しくしていくのであれば、
同時に、
「ルールを守って日本で生活している人には、これからも安心して暮らしてほしい」
というメッセージをどう伝えていくのか。
そこまで一緒に考える必要があるのではないでしょうか。
外国人材に「来てほしい」日本と、在留管理を厳しくする日本を、これからどう両立していくのか。
私自身も、まだ答えは持っていません。
ただ、日本で暮らす外国人の一人として、これからも考えていきたいと思っています。



コメント