外国人社員を採用した企業から、
「せっかく採用したのに、半年も経たずに辞めてしまった」
「面談では問題ないと言っていたのに、突然退職を申し出られた」
といった話を聞くことがあります。
外国人社員の早期離職は、給与や仕事内容だけが原因とは限りません。
日本人社員からすると小さなことに見える問題でも、外国人社員にとっては大きなストレスになっていることがあります。
私は外国人として日本で働く一方、外国人エンジニアの派遣、定期面談、契約更新、企業との調整、定着支援などに関わってきました。
その中で特に感じるのは、
外国人社員が突然辞めるように見えても、本人の中ではそのかなり前から小さな違和感や不安が積み重なっていることが多い
ということです。
そしてもう一つ重要なのは、
外国人材は「採用したら終わり」ではない
ということです。
日本での仕事だけでなく、生活、人間関係、言語、文化などさまざまな環境に適応しながら働いている外国人社員にとって、採用後の継続的なフォローは長期定着に大きく影響します。
この記事では、外国人社員が早期離職につながりやすい主な理由と、企業ができる対策について、実際の現場で感じてきたことを交えながら解説します。
外国人社員がすぐ辞める7つの主な理由
1.入社前に聞いていた仕事内容と実際の仕事が違う
外国人社員の離職につながりやすい原因の一つが、
入社前に想像していた仕事内容と、実際の仕事内容とのギャップ
です。
例えば、
- エンジニアとして入社したが、資料作成や補助業務が中心だった
- 設計業務と聞いていたが、実際には別の業務が多かった
- 将来的に専門的な仕事を担当できると思っていたが、なかなか機会がない
といったケースです。
日本人社員であれば、
「最初はこういう仕事から始めるものだろう」
と受け止める場合でも、外国人社員は、
「採用時に聞いていた話と違う」
「この仕事を続けても自分のキャリアにつながらない」
と感じる場合があります。
特に外国人エンジニアは、自分の専門性や今後のキャリアを強く意識している人も少なくありません。
仕事内容は口頭だけでなく「文章」で伝える
私が現場で特に重要だと感じたのが、仕事内容を口頭説明だけで終わらせないことです。
外国人社員の中には、日本語で日常会話はできても、仕事に関する細かい説明をすべて正確に理解するのが難しい人もいます。
その状態で仕事内容を口頭だけで説明すると、本人が理解した内容と企業側が伝えた内容にズレが生じることがあります。
そこで効果的だったのが、
仕事内容や担当範囲を日本語と英語などで文章として渡しておくこと
です。
現在は翻訳ツールやAIも非常に発達しています。
文章として情報が残っていれば、本人が帰宅後にもう一度読み直したり、自分の母国語に翻訳して内容を確認したりできます。
私自身、こうした形で仕事内容を明文化することで、本人が後から内容を確認でき、入社後の認識ギャップを減らせたと感じた経験があります。
採用時には、
- 実際に担当する仕事内容
- 最初の数か月で担当する業務
- 将来的に担当する可能性のある業務
- チーム内での役割
- 使用する言語
- 業務上求められるスキル
などを、できるだけ文章として残しておくことをおすすめします。
2.「分かりました」が本当に理解したという意味とは限らない
外国人社員とのコミュニケーションでは、
上司が説明した後、
「分かりましたか?」
と聞くと、
「はい、分かりました」
と返ってくることがあります。
しかし実際に仕事を始めると、指示とは違う作業をしていることがあります。
これは必ずしも本人が適当に返事をしているわけではありません。
外国人社員側には、
- 何度も質問すると能力が低いと思われそう
- 上司の話を途中で止めにくい
- 日本語の一部を理解したため、全体も理解したと思ってしまった
- 「分かりません」と言うこと自体に抵抗がある
といった心理がある場合があります。
私自身も外国人として日本で働いているため、
日本語を理解できることと、日本人と同じニュアンスまで完全に理解することは別問題
だと感じます。
そのため、
「分かりましたか?」
だけで確認を終わらせるのではなく、
「では、次に何をする予定か一度説明してもらえますか?」
「今日お願いした内容を簡単にまとめてもらえますか?」
と本人の言葉で説明してもらうことが効果的です。
これだけでも、指示の認識違いを早い段階で発見できます。
3.評価基準だけでなく「日本企業の評価文化」が分からない
外国人社員にとって、
「何をすれば評価されるのか分からない」
という状態は大きなストレスになることがあります。
日本企業では、
- 成果
- 報告・連絡・相談
- チームへの貢献
- 周囲への配慮
- 勤務態度
- 業務プロセス
などを総合的に評価するケースがあります。
一方、成果や専門性をより直接的に評価する文化で働いてきた外国人社員の場合、
「仕事はきちんと終わらせているのに、なぜ評価されないのか」
と疑問を持つことがあります。
特に初めて日本で働く外国人にとっては、日本企業特有の評価方法そのものが理解しにくいことがあります。
そのため、単純に評価制度の項目を説明するだけでは不十分な場合があります。
私は、
日本企業ではどのような行動が評価されやすいのか、その背景にある仕事の考え方まで事前に説明すること
が重要だと考えています。
例えば、
「なぜ報連相が重視されるのか」
「個人の成果だけでなくチームへの貢献を見るのはなぜか」
「上司がどのような点を評価しているのか」
まで説明しておくことで、後から発生する認識のズレや不満を減らすことができます。
外国人社員向けのオンボーディングの中に、
日本企業の評価文化や働き方を説明する時間
を入れることも有効です。
4.今後のキャリアが見えない
外国人社員との面談でよく話題になるのがキャリアです。
本人は、
- 3年後も同じ仕事をしているのか
- 昇給できるのか
- より高度な仕事を担当できるのか
- リーダーやマネージャーになれるのか
- 日本で長期間働き続けられるのか
といったことを考えています。
しかし外国人社員の中には、こうしたことを自分から上司や人事に相談することが得意ではない人もいます。
企業側から見ると、
「本人から何も言ってこないから問題ない」
と思っていても、本人の中ではすでに将来への不安が大きくなっている可能性があります。
だからこそ、本人から面談を申し出るのを待つのではなく、
会社側から定期的に面談の機会を設定すること
が重要です。
その場では、
「今の仕事に満足していますか?」
だけで終わらせず、
- 今後どのような仕事をしたいか
- 身につけたいスキルはあるか
- 現在の仕事で不安なことはあるか
- 会社に期待していることはあるか
などを率直に話せる場を作ることが重要です。
必ずしも昇進や異動を約束する必要はありません。
現在どのように評価されているのか、次のステップには何が必要なのかを共有するだけでも、本人の安心感は大きく変わります。
5.職場で孤立している
仕事内容に不満がなくても、人間関係が原因で退職につながることがあります。
外国人社員の場合、日本語の雑談に入りにくく、
昼休みも一人、
仕事中も必要な会話だけ、
という状態になることがあります。
周囲の日本人社員には悪意がなくても、本人は、
「自分はこのチームの一員ではない」
と感じる場合があります。
特に来日直後の場合、日本国内に家族や長年の友人がいないケースも少なくありません。
職場での孤立が、そのまま日本での生活全体の孤立につながることがあります。
企業が特別扱いする必要はありません。
しかし、
- 昼食に声をかける
- 雑談にも入りやすい雰囲気を作る
- チーム内で相談相手を決める
- 入社直後に放置しない
- 定期的に声をかける
といった小さな行動が、本人の安心感につながります。
6.本人が不満を言わないため、企業が問題に気づけない
外国人社員との面談で、
「何か困っていることはありますか?」
と聞いたところ、
「特にありません」
と答えられることがあります。
しかし、それだけで問題がないと判断するのは危険です。
外国人社員側には、
「不満を言ったら会社に悪く思われるかもしれない」
「契約更新に影響するかもしれない」
「問題のある社員だと思われたくない」
という心理がある場合があります。
実際に私が外国人社員と接してきた中でも、最初は「特に問題ありません」と答えていた人が、質問を具体的にすると初めて悩みを話し始めることがありました。
そのため、
「困っていることはありますか?」
という一つの質問だけではなく、
- 仕事内容
- 上司とのコミュニケーション
- 職場の人間関係
- 業務量
- キャリア
- 日本語
- 生活環境
など、テーマを分けて質問することが重要です。
7.仕事以外の生活問題が退職につながる
これは、外国人材を支援する中で特に強く感じてきた部分です。
外国人社員が日本を離れる理由は、必ずしも仕事だけではありません。
例えば、
- 日本で友人を作れない
- 病院へ行っても医師とのコミュニケーションがうまくできない
- 行政手続きが分からない
- 住居の問題がある
- 家族と離れて暮らすことがつらい
- 日本語で日常生活を送ることに疲れてしまう
といった悩みがあります。
実際に、仕事そのものには大きな不満がなくても、日常生活での孤独や言語の問題から日本で生活を続けること自体に不安を感じ、日本を離れることを考える人もいました。
企業側からすると、
「それはプライベートの問題ではないか」
と思うかもしれません。
もちろん企業が社員の生活すべてを解決する必要はありません。
しかし外国人社員の場合、
日本で働くことと、日本で生活することが非常に密接につながっています。
だからこそ、
- 病院や行政手続きについて相談できる窓口
- 生活上困った時に相談できる担当者
- 日本語学習のサポート
- 社内外のコミュニティへの参加支援
- 必要な生活情報の提供
など、必要に応じた生活面でのサポートが長期定着につながると考えています。
外国人社員の離職を防ぐために企業ができる5つのこと
1.入社前の情報を「分かりやすく、文章でも」伝える
仕事内容を良く見せることよりも、
本人が実際の働き方を正しく理解したうえで入社すること
の方が長期的には重要です。
特に外国人社員の場合は、
- 実際の仕事内容
- 最初に担当する業務
- 日本語を使う場面
- チーム構成
- 評価方法
- 将来的な業務の可能性
などを文章でも共有することをおすすめします。
必要に応じて英語を併記したり、本人が翻訳ツールを使って確認できる状態にしておくことも有効です。
2.入社後3か月でフォローを終わらせない
入社直後のフォローは非常に重要です。
例えば、
入社1週間後
↓
1か月後
↓
3か月後
といったタイミングで面談を行うことで、初期の問題を発見しやすくなります。
しかし私は、外国人社員の場合は3か月でフォローを終了するべきではないと考えています。
仕事に慣れてきた後だからこそ見えてくる問題もあります。
例えば、
- 評価への不満
- キャリアへの不安
- 人間関係
- 生活上の問題
- 契約更新への不安
などです。
そのため、
3か月後
↓
6か月後
↓
その後も定期的に
という形で、継続的に面談する仕組みを作ることが重要です。
3.定期面談には共通の質問フォーマットを用意する
定期面談を、
「最近どうですか?」
「問題ありません」
だけで終わらせてしまうと、問題の変化を把握できません。
私は、定期面談ではある程度質問項目をフォーマット化しておくことが非常に有効だと感じています。
例えば毎回、
- 仕事内容
- 業務量
- 上司との関係
- チームとの関係
- 日本語
- キャリア
- 生活
- 今後の希望
について確認します。
同じ項目を継続して確認することで、
「前回は問題ないと言っていたが、今回は人間関係について不満が出ている」
「以前よりキャリアへの不安が強くなっている」
といった本人の変化を比較できるようになります。
面談記録を残しておけば、担当者が変わった場合でも状況を引き継ぎやすくなります。
4.外国人社員本人から相談してくるのを待たない
「何かあれば本人から相談してくるだろう」
という考え方は、外国人社員のフォローでは注意が必要です。
日本語の問題、上下関係への意識、評価への不安などから、自分から相談できない人もいます。
そのため、
会社側から定期的にコミュニケーションを取る仕組み
を作ることが重要です。
問題が起きてから話すのではなく、問題がない時から話せる関係を作っておくことが、いざという時の相談につながります。
5.小さな変化を見逃さない
退職を考え始めた社員には、さまざまな変化が現れる場合があります。
例えば、
- 会話が減る
- 面談で発言しなくなる
- キャリアについて頻繁に質問する
- 契約期間や更新時期を確認する
- 有給休暇の取得が増える
- 将来の業務に関心を示さなくなる
といった変化です。
もちろん、これだけで退職すると判断することはできません。
しかし以前と明らかに違う状態が続いているのであれば、一度本人と話をするきっかけにした方がよいでしょう。
外国人社員の早期離職は「突然」ではないことが多い
企業側から見ると、
「昨日まで普通に働いていたのに、突然辞めると言われた」
と感じることがあります。
しかし本人の中では、
小さな違和感
↓
相談できない
↓
不満や不安が蓄積する
↓
この会社で働き続けることを迷う
↓
転職活動を始める
↓
退職を伝える
という流れがすでに進んでいる場合があります。
つまり、退職を伝えられた時点では、本人の中ではかなり前から結論が出ている可能性があります。
そのため重要なのは、
退職を申し出られてから引き止めることではなく、「辞めたい」と考える前に小さな問題を発見すること
です。
「採用したら終わり」では長期定着は難しい
外国人材の採用では、採用すること自体がゴールになってしまうことがあります。
しかし、本当に難しいのは採用した後です。
外国人社員の多くは、日本人社員と比べると、
- 日本に家族や昔からの友人がいない
- 日本の職場文化に慣れていない
- 日本語で生活しなければならない
- 母国とは異なる制度の中で生活する
- 自分から助けを求めにくい
といった環境の中で働いています。
だからこそ外国人社員の定着は、人事担当者だけが考えればよい問題ではありません。
上司、同僚、人事、派遣会社や支援担当者など、
外国人社員と社内外で関わる人たちが、それぞれ少しずつ関心を持つこと
が重要だと私は考えています。
何でも外国人だからと特別扱いする必要はありません。
しかし、
「何か困っていないか」
「説明は正しく伝わっているか」
「仕事だけでなく、日本での生活に問題はないか」
と少し注意を向けるだけでも、本人の安心感は変わります。
こうした継続的な関心とフォローが積み重なることで、初めて外国人材の長期定着につながっていきます。
まとめ
外国人社員がすぐ辞める理由は、
「外国人は日本企業に合わない」
という単純な問題ではありません。
仕事内容の認識違い、コミュニケーション、評価文化、キャリア、人間関係、生活環境など、複数の問題が重なっている場合があります。
企業側では小さな問題に見えても、本人にとっては日本で働き続けるかどうかを考えるほど大きな問題になっていることもあります。
だからこそ重要なのは、
採用して終わりではなく、採用後も継続的に関心を持つことです。
入社前には仕事内容を分かりやすく伝える。
入社後には定期的に面談する。
同じ質問項目を継続して確認し、小さな変化を把握する。
必要であれば仕事以外の生活面にも目を向ける。
そして人事だけではなく、外国人社員に関わる周囲の人たちも一緒に支える。
こうした積み重ねが、外国人材が日本企業で安心して長く働くための土台になると考えています。
ヒトデタリナイでは今後も、外国人材の採用だけでなく、採用後の定着、面談、コミュニケーション、マネジメントについて、外国人として日本で働く当事者の視点と、企業現場で外国人材を支援してきた経験の両方から発信していきます。

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