「自分はちゃんとできているのか分からない」外国人エンジニアが入社2か月で退職を考えた理由

離職・定着

先日、私が担当している外国人エンジニアから連絡がありました。

次回の契約更新までは働くが、その後は退職したいと考えている、という内容でした。

理由を聞くと、最初に出てきたのは日本語への不安でした。

今の仕事自体はできている。

ただ、日本語の資料を読む時、日本人の同僚よりも理解するまでに時間がかかる。

専門用語も多く、

「自分は本当にちゃんとできているのだろうか」

「このまま続けていけるのだろうか」

という不安が強くなっていたようです。

本人から届いたメールには、こんなことが書かれていました。

現在の仕事はできていますが、日本人のチームメンバーと比べると、日本語の資料を十分に理解するまでに時間がかかります。
それが自分にとってフラストレーションになり、プレッシャーも感じています。

さらに、

次の仕事では、もう少し英語を使える環境で働きたい。

仕事以外でも、今住んでいる地域では休日に楽しめる場所が少なく、自分の生活スタイルには長期的に合わないと感じている。

そんなことも書かれていました。

面接では、日本語で問題なく話していた

このエンジニアは、入社前の面接では日本語で大きな問題なく会話できていました。

日常的なコミュニケーションで困るような印象もありませんでした。

専門用語などで分からない部分があっても、

「もう少しゆっくり話してください」

と本人からお願いすれば、派遣先の担当者がゆっくり話すことで理解し、その後は問題なく答えていました。

つまり、

「日本語がほとんど通じない人だった」

というケースではありません。

ただ、実際の仕事に入ると少し状況が変わります。

資料には専門用語が増えます。

文章になると漢字も多くなります。

私がこれまで担当してきた外国人社員の中にも、会話では問題なくやり取りできても、漢字や専門用語の多い文書になると理解に時間がかかる人はいました。

今回の本人も、

そうした部分で少しずつ自信を失っていった可能性があります。

派遣先の評価は、本人が思っているほど悪くなかった

このタイミングで、私は派遣先にも本人の評価を確認しました。

日本語については、

まだ改善が必要な部分がある。

すぐに伸びるものではないので、今後も慣れていく必要がある。

という評価でした。

一方で、

スキル面については問題ないという話でした。

本人が母国で積んできた経験や技術と、派遣先が求めていた業務内容の相性が非常によく、

そこを評価して採用した経緯もあります。

実際、今回も契約は継続する方向で進んでいました。

本人は、

「自分はうまくできていないのではないか」

と感じていました。

しかし派遣先は、

「日本語には改善点があるが、仕事のスキルは評価している」

と見ていました。

ここには、かなり大きな差がありました。

「改善点がある」と「評価されていない」は同じではない

仕事をしていれば、誰にでも改善点は出てきます。

日本語について、

「もう少し慣れてほしい」

「資料を読むスピードを上げてほしい」

と言われることもあるでしょう。

ただ、

「改善点がある」と「評価されていない」は同じではありません。

今回の本人は、日本語で苦労している部分を強く意識する一方で、

自分の技術やこれまでの経験が評価されていることを、まだ十分には知りませんでした。

ここで私は、

自分のこれまでのやり方について一つ考え直すことになりました。

私は「契約更新の時に確認すれば十分」だと思っていた

派遣社員の場合、

派遣先から本人へ評価が直接伝えられるとは限りません。

私もこれまでは、

契約更新のタイミングや、定期的に派遣先を訪問する時に評価を確認することが多くありました。

今回のエンジニアは、

入社からまだ2か月ほどでした。

これまでの私は、

このくらいの時期であれば、

契約更新前に派遣先の評価を確認して本人に伝えれば十分だと考えていました。

特別遅いとは思っていませんでした。

でも今回、

その考えが少し変わりました。

本人が不安を抱き始めるタイミングと、契約更新のタイミングは同じではありません。

私が派遣先から最初のフィードバックをもらう頃には、

本人の中ではすでに、

「この仕事を続けるのは難しいかもしれない」

というところまで不安が大きくなっていました。

会社が評価していても、

その評価を本人が知らなければ、

安心にはつながりません。

私の返信も、もっと早くできたと思う

本人から不安について書かれたメールをもらった後、

私はすぐに十分な返事をすることができませんでした。

本人が別の仕事も検討したいという話をしていたため、

その間に別の派遣先への紹介も進めていました。

ちょうど似たポジションを募集している会社があり、

本人もその仕事に興味を示しました。

その対応をしているうちに、

最初のメールへの返信が結果として3~4日ほど遅れてしまいました。

その数日が本人の気持ちにどこまで影響したのかは分かりません。

本人はその前からすでに不安を抱えていたため、

返信が遅れたことが退職を考えた原因だとは言えません。

ただ、

不安を抱えて連絡してきた本人に対して、

もっと早く反応できたはずだという反省は残っています。

別の会社に行けば、すべて解決するとも言い切れなかった

本人は、

次の仕事ではもう少し英語を使いたいとも話していました。

それ自体は一つの選択肢です。

英語を多く使える仕事や、外資系企業を探す方法もあります。

ただ、

別の日本企業へ移れば、

日本語への不安がすべてなくなるとも限りません。

日本企業で働く以上、

社内文書や会議、日常のコミュニケーションで日本語を使う場面は多くあります。

少なくとも私がこれまで担当してきた外国人エンジニアの中には、

最初はよく似た不安を抱えていた人もいました。

実際、

今回の派遣先には、私の会社から別の外国人エンジニアも派遣されています。

その人も最初は似た不安を抱えていましたが、

現在は3年以上働いています。

もちろん、

だから今回の本人も残るべきだ、

という話ではありません。

英語を中心に働きたいのであれば、

その希望に合う仕事を探すこともできます。

生活環境が合わないのであれば、

勤務地を変えるという選択もあります。

私は本人に、

  • 今紹介している新しい仕事に応募する
  • 別の仕事をさらに探す
  • 今の派遣先でもう少し続けてみる

という選択肢を伝えました。

どの道を選んでも、

支援は続けると伝えています。

日本語だけではなく、生活環境も重なっていた

今回のケースを、

「日本語が不安だから辞めたい」

だけで説明するのは正確ではないと思っています。

本人は日本に来た当初、

東京の中心部にある日本語学校に通っていました。

友人の多くも、今も東京周辺に住んでいます。

一方で、

現在の勤務先は、首都圏の中でも東京から少し離れた地域にあります。

東京まで出るには、

場所によっては片道1時間半ほどかかります。

電車はありますが、

時間も交通費も、日本語学校に通っていた頃とはかなり違います。

本人も、

勤務先のすぐ近くで暮らすのではなく、

少し栄えた地域に家を借り、

そこから1時間ほどかけて通勤しています。

仕事では日本語にプレッシャーを感じる。

以前より友人にも会いにくい。

休日の過ごし方も、自分が思っていた生活とは少し違う。

そうしたものが重なって、

「この環境で長く続けるのは難しい」

という気持ちにつながった可能性があります。

外国人社員の退職理由は、一つの原因だけで決まるとは限りません。日本語、仕事、評価、人間関係、生活環境など、複数の要因が重なるケースについては、「外国人社員がすぐ辞める理由とは?現場で感じた7つの原因と企業ができる対策」でまとめています。

派遣先と本人では、見えている状況が違っている

現時点で、

派遣先が本人の不安をどこまで把握しているかについて、私はまだ確認できていません。

ただ、

これまでのやり取りを見る限り、

本人が退職や転職まで考えていることは、

まだ派遣先には十分伝わっていない可能性が高いと感じています。

派遣先から見ると、

日本語には改善点がある。

でもスキルには問題がない。

契約も継続する。

今のところ、それくらいの状況です。

一方で本人は、

退職や転職まで考えています。

同じ職場にいても、

両者が見ている状況はかなり違います。

その間にいる派遣元として、

今回私は、

問題が起きてから調整するだけでは足りないのかもしれないと感じました。

本人が見ている自分と、派遣先が見ている本人の間に差が広がっていないか。

そこをもっと早く確認する必要があったのだと思います。

今後は、契約更新を待たずに確認したい

現時点では、

本人からまだ最終的な返事は来ていません。

今の職場でもう少し続けるのか。

新しい仕事へ移るのか。

それとも退職するのか。

まだ分かりません。

私自身も、

本人に今の職場へ残ってもらうことだけが正解だとは思っていません。

本人が考えた上で、

別の環境の方が自分に合っていると判断するのであれば、

その選択も尊重したいと思っています。

ただ、

今回の経験を通して、

私自身の管理の仕方は少し変えたいと思いました。

これまでは、

派遣先への評価確認を契約更新のタイミングに合わせて行うことが多くありました。

今後はそれだけではなく、

入社して1か月前後など、

契約更新とは別の早いタイミングでも本人の感想や不安を確認する。

必要であれば派遣先にも評価を聞く。

そして、

その評価を本人へ返す。

あわせて読みたい

外国人社員との面談では、仕事の状況だけでなく、評価、キャリア、人間関係、生活面などを早めに確認することも大切です。定期面談で確認したい項目はこちらでまとめています。

外国人社員との定期面談で確認すべき8つの項目|離職を防ぐ質問例と現場で感じたポイント

そうしたやり取りを増やしていきたいと思っています。

本人が

「自分はできていない」

と思っている時に、

派遣先は実は

「改善点はあるけれど、スキルは評価している」

と思っているかもしれません。

会社が評価していることを、本人が知らなければ、その評価は安心につながるのでしょうか。

今回の本人が最終的にどんな選択をするのかは、まだ分かりません。

ただ今回、

私は「評価を確認するタイミング」について考え方を変えることになりました。

皆さんの会社では、

外国人社員が自分の仕事をどう見ているのか。

そして会社が本人をどう評価しているのか。

その二つを、本人の不安が大きくなる前に確認できているでしょうか。

コメント

タイトルとURLをコピーしました