やさしい日本語は「ゆっくり話すこと」ではない|外国人面接で感じたこと

コミュニケーション・マネジメント

先日、外国人エンジニアの面接に同席した時、

「やさしい日本語」について改めて考える出来事がありました。

その日は、外国人候補者2名がそれぞれ30分ずつ、同じ企業と対面面接を行いました。

私は企業側の担当者と一緒に会議室に残り、候補者が一人ずつ交代で入ってくる形で面接に同席していました。

2人とも、技術やこれまでの経験については自信を持って答えていました。

企業側の表情を見ても、スキルや経験については良い印象を持っているように見えました。

実際、面接後に企業からフィードバックを聞いた時も、その点については高く評価していました。

ただ、面接の最後に、2人とも同じ質問で止まりました。

2人とも、同じ質問で表情が変わった

企業側の担当者は、候補者に健康状態について確認する質問をしました。

当時の言葉をそのまま再現したものではありませんが、イメージとしては、

「ご勤務いただくにあたり、持病や健康上の理由により、通勤に支障が出る可能性や、弊社として配慮すべき事項はございますでしょうか。」

というような、かなり丁寧で長い表現でした。

私はその質問を聞いた瞬間、

「これは少し分かりにくいかもしれない」

と思いました。

それまでスムーズに答えていた候補者の表情が急に固まり、何と答えればいいのか迷っているように見えました。

そこで私は途中から、

「健康上、何か問題はありますか?」

と簡単に言い換えました。

すると候補者はすぐに、

「はい、問題ありません」

と答えました。

そして次の候補者でも、ほぼ同じことが起きました。

同じ質問で止まり、短く言い換えると、すぐに答えることができました。

その時私は、

「ゆっくり丁寧に話すことと、分かりやすい日本語で話すことは同じではない」

と改めて感じました。

丁寧にしようとして、逆に分かりにくくなることがある

私は、その企業の担当者が悪い話し方をしていたとは思っていません。

むしろ、相手が外国人だからこそ、失礼にならないように丁寧に話そうとしていたように私には見えました。

話すスピードも速くありませんでした。

一つひとつの言葉も丁寧に発音していました。

ただ、

丁寧にしようとするほど、

  • 文が長くなる
  • 敬語が増える
  • 抽象的な言葉が増える
  • 一つの文章に複数の意味が入る

ことがあります。

例えば、

「弊社として配慮すべき事項はございますでしょうか」

という表現は、日本語としては丁寧です。

でも、日本語を母語としない人にとっては、

「配慮」

「事項」

「ございますでしょうか」

といった言葉を一度に処理する必要があります。

さらに、その前には、

「持病」

「健康上の理由」

「通勤に支障」

といった言葉も入っています。

ゆっくり話したとしても、

使われている言葉や文章の構造そのものが難しければ、理解しやすくなるとは限りません。

私自身が外国人だから、気づきやすかった部分もあると思う

私はこれまで、外国人エンジニアの面接に数多く同席してきました。

その中で、

候補者が質問の意味を理解できずに止まる場面も何度も見てきました。

今回も、質問を聞いた直後の表情を見て、

「日本語力全体の問題というより、質問の形で止まっているのかもしれない」

と感じました。

また、私自身も外国人として日本企業で働いてきました。

日本語をある程度話せても、

長い敬語表現や抽象的な言い回しになると、一度頭の中で整理しないと意味が入ってこないことがあります。

だから今回も、

「この人たちは日本語ができない」

とは思いませんでした。

むしろ、

質問を短くすれば伝わるのではないか

と思いました。

実際、

「健康上、何か問題はありますか?」

と変えると、2人ともすぐに答えることができました。

やさしい日本語は、速度だけではなく「言い換え」も重要

外国人社員とのコミュニケーションについて調べると、

「やさしい日本語を使いましょう」

という言葉をよく見かけます。

大切な考え方だと思います。

ただ今回の経験から、

やさしい日本語を、

「外国人に対して、ゆっくり丁寧に話すこと」

に近いものとして捉えている人もいるのかもしれない、と感じました。

もちろん、話すスピードを少し落とすことも大切です。

ただ、それだけでは十分ではありません。

今回の面接を見て私は、

やさしい日本語では、話す速度だけでなく、相手が理解しやすい言葉や文の形に言い換えることが重要なのだ

と改めて感じました。

例えば、

「弊社として配慮すべき事項はございますでしょうか」

ではなく、

「会社に伝えておきたい健康上のことはありますか?」

さらに必要であれば、

「健康上、何か問題はありますか?」

「通勤は問題ありませんか?」

と質問を分ける。

この方が、何を聞かれているのか分かりやすくなります。

一文を短くして、一度に一つだけ聞く

私が外国人社員に何かを説明する時に意識しているのは、

できるだけ一文を短くすることです。

例えば、

「健康上の理由で通勤や勤務に影響があり、会社として何か配慮した方がよいことはありますか?」

と一度に聞くのではなく、

まず、

「健康上、何か問題はありますか?」

次に必要であれば、

「通勤は問題ありませんか?」

「会社に手伝ってほしいことはありますか?」

と分ける。

そうすれば、一つずつ意味を確認しながら答えることができます。

これは面接だけの話ではありません。

入社後の、

  • 安全教育
  • 勤怠ルールの説明
  • 評価面談
  • 定期面談
  • 契約更新
  • 生活面の案内

でも同じだと思います。

理解できないまま「分かりました」と答えてしまえば、その後の仕事や会社への不安につながることもあります。

外国人社員の「分かりました」が本当に同じ理解を意味しているのか、そして「分かりません」と言いやすい環境をどう作るかについては、「外国人社員の『分かりました』は本当に理解している?日本企業で働いた私が感じたこと」で詳しく書いています。

日本語力の問題だと決めつける前に、質問の形を見直す

今回の2人の候補者は、

面接全体を通して見れば、日本語でのコミュニケーションに大きな問題があるようには見えませんでした。

技術的な質問にも答え、自分の経験についても説明できていました。

それでも、

最後の一つの質問だけで止まりました。

もしその場だけを見れば、

「日本語があまり分からないのかな」

と思うこともできたかもしれません。

でも、

質問を少し短くしただけで、2人ともすぐに答えることができました。

だから私は、

外国人社員が質問に答えられない時、

すぐに、

「本人の日本語力が足りない」

と考える前に、

一度、

「この質問は、本当に分かりやすい形になっているか」

を確認してみてもいいと思っています。

やさしい日本語を使うことは、相手の能力を低く見ることでもありません。

今回の候補者も、技術的な質問には問題なく答えていました。

仕事の能力と、難しい敬語表現を理解できることは別です。

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外国人社員とのコミュニケーションでは、言葉が難しいだけでなく、遠回しな表現が「指示」として伝わらないこともあります。派遣先で実際にあった事例はこちらで紹介しています。

「直接は言えないんです」外国人社員への注意が伝わらなかった理由

「ゆっくり話したから伝わる」ではなく、「伝わったか」を見る

今回の面接を見て、

私は改めて、やさしい日本語について考えました。

話すスピードを落とす。

丁寧に話す。

それ自体は悪いことではありません。

でも、それだけで相手に伝わるとは限りません。

大切なのは、

自分がどれだけ丁寧に話したかではなく、相手が理解できる形になっていたか

を見ることだと思います。

今回、

長く丁寧な質問では答えにくそうだった2人が、

短い質問に言い換えると、すぐに答えることができました。

その場面を見て私は、

やさしい日本語とは、ゆっくり話すことだけではなく、相手に届く形に言葉を変えることなのだ

と感じました。

皆さんの会社では、

外国人社員に話す時、

「ゆっくり丁寧に話すこと」だけでなく、「使っている日本語そのものが分かりやすいか」まで確認しているでしょうか。

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