外国人社員とのコミュニケーションで、
「ちゃんと説明しているのに、なぜ伝わらないのだろう」
と感じることがあります。
その時、まず外国人社員の日本語力を疑いたくなることもあるかもしれません。
もちろん、日本語力が影響するケースはあります。
ただ、以前ある派遣先で話を聞いた時、私は少し違う可能性を感じたことがありました。
その外国人社員は、すでにその職場で約4年働いていました。
技術経験もあり、仕事にも慣れていて、派遣先からの評価も大きく悪いわけではありませんでした。
そんな中、派遣先の担当者から、
「大きな問題はないのですが、時々こちらが言っていることを本当に理解しているのか分からないことがあります」
と言われました。
そこで私は、こう聞きました。
「何か指摘したり、直してほしいことを伝える時は、直接的に言っていますか?」
すると担当者は、
「いや、あまり直接は言わないですね。少し遠回しに言うことが多いです」
と答えました。
私はその時、
「もしかすると、日本語力だけの問題ではないかもしれない」
と思いました。
「修正してほしい」が、本人には「感想」に聞こえているかもしれない
当時の具体的な言葉は覚えていませんが、イメージとしては、例えば図面を修正してほしい場面で、
「この角の部分、もう少し丸い方がいい気はしますね」
のように伝える感じです。
伝える側としては、
「ここを少し修正してほしい」
という意味で話しているかもしれません。
ただ、受け取る側には、
「この人は、丸い方がいいと思っているのかな」
という一つの意見や感想のように聞こえる可能性もあります。
そうすると、本人は必ずしも修正指示だとは受け取らず、そのまま作業を続けるかもしれません。
一方、伝えた側は、
「さっき伝えたのに、なぜ直していないのだろう」
と感じます。
ここでは、どちらかが適当に仕事をしているわけではありません。
同じ言葉を、違う強さで受け取っている可能性がある
ということだと思います。
日本語が話せることと、遠回しな意図まで理解できることは別
私は以前、京都に本社がある会社で働いていたことがあります。
周囲には京都出身の社員も多く、その職場で働く中で、相手に強く言わず、かなり柔らかい表現で伝える会話に戸惑った経験がありました。
もちろん、
「京都出身の人はみんな遠回しに話す」
という意味ではありません。
あくまで、私がその職場で経験した一つのケースです。
ただ、外国人として働いていた私は、
「これは本当にお願いなのか」
「ただの感想なのか」
「実は直してほしいという意味なのか」
と迷うことがありました。
だから今回、派遣先の担当者から話を聞いた時、
「内容ではなく、伝え方のズレかもしれない」
と比較的早く感じました。
日本語で日常的に会話できることと、遠回しな表現に含まれている意図まで同じように読み取れることは別です。
特に、
「このくらい柔らかく言えば、何をしてほしいか分かるだろう」
という感覚は、相手にも同じように共有されているとは限りません。
面談の後、本人とも10分ほど話してみた
その日の面談が終わった後、帰る前に、その外国人派遣社員本人とも10分ほど話す機会がありました。
普通に日本語で会話してみると、少なくとも日常的なコミュニケーションそのものには大きな違和感を感じませんでした。
こちらの質問を理解し、自分の考えも日本語で説明できていました。
もちろん、10分程度の会話だけで、日本語力や業務理解をすべて判断できるわけではありません。
それでも私は、
「この人の日本語力だけが原因なのだろうか」
と改めて感じました。
むしろ、このくらい日本語でやり取りできるのであれば、
指示をもう少し明確な形で伝えるだけで、本人の仕事のしやすさやパフォーマンスは変わるかもしれない
と思いました。
「もう少し直接伝えた方がいい」と言ったら
私は派遣先の担当者に、
外国人社員の場合、日本語で会話ができても、遠回しな表現の意図まで同じように受け取れるとは限らないことを伝えました。
その上で、
「直してほしいことは、もう少し直接伝えた方が分かりやすいと思います」
と話しました。
すると返ってきたのが、
「それが、性格的になかなかできないんです」
という言葉でした。
私は少し笑ってしまいましたが、同時にとても現実的な話だと思いました。
その担当者が、わざと曖昧に伝えようとしていたわけではありません。
本人なりに、相手を強く責めず、傷つけないように伝えようとしていたのだと思います。
ただ、
「外国人社員には分かりやすく伝えた方がいい」
と分かっていても、長年身についた話し方や性格を急に変えるのは簡単ではありません。
だから私は、
「もっと直球で言えばいい」
だけでは、現場では解決しにくいとも感じました。
直接伝えることと、きつく言うことは同じではない
大切なのは、
直接伝えること=強く言うこと
ではないということです。
例えば、
この角の部分、もう少し丸い方がいい気はしますね。
ではなく、
この角の部分を、もう少し丸く修正してください。
と伝える。
これだけでも、本人には「感想」ではなく「修正してほしいこと」だと分かりやすくなります。
さらに必要であれば、
この部分は、次回からも同じ形でお願いします。
理由は、次の工程で問題が起きる可能性があるからです。
と伝えれば、
「何を変えるのか」
「なぜ変えるのか」
「次からどうすればいいのか」
まで分かります。
言い方を強くする必要はありません。
相手を責める必要もありません。
優しく伝えることと、曖昧に伝えることは同じではない
ということだと思います。
私なら「結論→理由→次の行動」で伝える
もし私が、直接的な言い方が苦手な人に伝え方を提案するとしたら、
性格そのものを変えてもらおうとはしません。
代わりに、話す順番を決める方法を提案します。
例えば、
① 結論
「この部分は修正してください」
② 理由
「このままだと次の工程で問題になる可能性があるからです」
③ 次の行動
「次回からは、この形で作成してください」
という順番です。
この形なら、強い口調で話さなくても、相手には必要な情報が伝わります。
さらに最後に、
「次回はどうする予定ですか?」
と本人の言葉で確認すれば、認識のズレにも気づきやすくなります。
理解確認も大切ですが、その前に、
そもそもこちらの言葉が「指示」や「改善してほしいこと」として聞こえているか
を見る必要があるのだと思います。
あわせて読みたい
指示を明確に伝えても、外国人社員の「分かりました」が必ずしも同じ理解を意味するとは限りません。理解確認の方法や、「分かりません」と言いやすい環境については、こちらの記事で考えています。
「言ったつもり」と「伝わった」は別
今回のケースで、派遣先の担当者は何も伝えていなかったわけではありません。
むしろ、相手に配慮しながら伝えようとしていました。
ただ、その柔らかさが、相手には
「それほど重要ではない話」
として聞こえていた可能性があります。
企業側から見れば、
「ちゃんと伝えた」
外国人社員側から見れば、
「修正する必要があるとは思わなかった」
というすれ違いです。
外国人社員とのコミュニケーションでは、
日本語力だけを見るのではなく、
自分の言葉が相手にどのような意味として届いているのか
を考えることも必要だと思います。
同じように、職場で「何を報告すべきか」という基準そのものが本人と会社でずれているケースもあります。報連相をめぐる実際のすれ違いについては、「外国人社員に『報連相が足りない』と感じるのはなぜ?現場で見えた『報告すべきこと』の認識のズレ」で紹介しています。
日本語が話せるからといって、言葉の裏側まで推測できるとは限りません。
だからこそ、
外国人社員に分かりやすく伝えるために必要なのは、強い言葉ではなく、
相手に何をしてほしいのかが、推測しなくても分かる言葉にすること
なのではないでしょうか。
ただ、分かりやすく伝えたからといって、その行動がすぐに身につくとは限りません。説明を聞くことと、実際の職場で自然にできるようになることは別です。
外国人派遣社員への教育について、派遣前に教えるだけでは足りないと感じた経験は、
「『ビジネスマナーを教えているのか?』派遣先からの一言で考えた外国人派遣社員の教育」
で書いています。
皆さんの会社では、外国人社員に何かを指摘する時、
「相手を傷つけない言い方」だけでなく、「相手に本当に伝わる言い方」になっているかまで考えているでしょうか。



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